HIA俳句大会

入選作品紹介

第17回 HIA俳句大会 入選作品

俳句部門

選者

稲畑汀子・鷹羽狩行・宮坂静生・有馬朗人・永田龍太郎
星野恒彦・大久保白村・安西篤・棚山波朗・今瀬剛一
大輪靖宏・加藤耕子・大高霧海・柏原眠雨/
(外国語)木内徹・木村聡雄

国際俳句交流協会賞 (The Haiku International Association Award)

少しずつ空を動かす鰯雲 目黒区 古谷あやを
語り継ぐことの多々ある残暑かな 平塚市 国沢 凛風

俳人協会賞 (The Association of Haiku Poets Award)

国境の枯野に列車引き離す 杉並区 境  惇子

現代俳句協会賞 (The Modern Haiku Association Award)

ヴイナスのあらはれさうな薔薇の門 夷隅郡 岡西 宣江

日本伝統俳句協会賞 (The Association of Japanese Classical Haiku Award)

粗食こそ贅といふ世や目刺食む 杉並区 和場ゆすら

日本経済新聞社賞 (The Nihon Keizai Shimbun Award)

指先の乾く淋しさ冬に入る 札幌市 岡本  清

ジャパンタイムズ社賞

夏帽子線量高き風に飛ぶ 登米市 藤野 尚之

稲畑汀子選

(特選)

もう少し見てゐたき萩抱き起こす 富士宮市 露乃 草子
粗食こそ贅といふ世や目刺食む 杉並区 和場ゆすら

(入選)

ゴッホの絵観てマロニエの雨の街 所沢市 三好かほる
荒鷹となる長城を越ゆる時 豊中市 小畑 晴子
海原に見えぬ沖あり鳥帰る 秋田市 和田  仁
少しずつ空を動かす鰯雲 目黒区 古谷あやを
白夜にも夜気といふものありしかな 名古屋市 辻 美智子
しばらくは四方の山見る盆帰省 仙台市 畑中 次郎
かなかなや父母と過せし山の家 名古屋市 清水 京子
この家にいつしか馴染み盆支度 名古屋市 鈴木 愛子
振り向けば月山深きの中 犬山市 長瀬きよ子
暁はまだ夜の続き虫時雨 久留米市 谷川 章子

鷹羽狩行選

(特選)

少しずつ空を動かす鰯雲 目黒区 古谷あやを
赤道を越えて機上に昼寝覚 福山市 田村祐巳子

(入選)

きつつきや森の奥なる美術館 所沢市 三好かほる
炎天や電工綱に身を委ね 富士市 飯野 定子
葉の皿や南の島の夏料理 名古屋市 兼松  悟
甚平の肩いからせて乾きけり 渋谷区 佐藤みちゑ
青すぎる空や八月十五日 世田谷区 草野 准子
月光を直立させて神の滝 南国市 秋本 弘子
鯉はねてよりの静けさ水の秋 富士宮市 藤巻 朋子
校長も踊る阿呆に加はりぬ 秋田市 和田  仁
大文字消えたる闇の深さかな 神戸市 田中 由子
月よりの使者ならむ白曼珠沙華 杉並区 和田とし子

宮坂静生選

(特選)

ヴイナスのあらはれさうな薔薇の門 夷隅郡 岡西 宣江
もどり鰹鋼の光放ちけり 南国市 秋本 弘子

(入選)

子午線を越ゆる帆船夏来たり 秋田市 和田  仁
灯の入りて筋骨強き立侫武多 登米市 藤野 尚之
カエサルの褒めるローマの良夜かな 戸田市 梅本 重一
大阿蘇をゆつたり流れ天の川 登米市 藤野 尚之
七十年いまだ途中の敗戦日 さいたま市 市川 稲舟
中世の片陰にゐて町プラハ 横浜市 甲斐 輝子
地球にも心音のあり滴れる 横浜市 佐藤 一星
水を打ち一時宥める地球面 武蔵野市 佐藤 正昭
夾竹桃野良猫多きエルサレム 豊島区 毬矢まりえ
十三夜波に引かるるやう歩み 久喜市 梅田ひろし

有馬朗人選

(特選)

昭和は死なず八月のくるたびに 鎌倉市 佐々木一馬
崑崙山黄河生まるる星月夜 渋谷区 小川 耀水

(入選)

荒鷹となる長城を越ゆる時 豊中市 小畑 晴子
聖杯に溢るるばかり寒月光 秋田市 和田  仁
鞄よりウィーンの森の栗ころげ 世田谷区 草野 准子
マトリョーシカ並べ売る店小鳥来る 杉並区 境  惇子
記紀の神山巓に置き大花野 犬山市 長瀬きよ子
鍵(かぎ)の鈴涼しき音の形見かな 中野区 高岡由美子
川の瀬に風吹き渡り地蔵盆 富士宮市 今野 永子
蜩の遠音に暮るる宗祇水 横浜市 臼杵 游児
島かけて迎へる神や浦祭 七尾市 本谷眞治郎
聖廃墟出て初蝶に出会ひけり 杉並区 境  惇子

星野恒彦選

(特選)

終戦日どの戦争と問ふ子かな 名古屋市 清水 京子
落ちてなほ日差しを返す白椿 名古屋市 中村 啓輔

(入選)

仏法僧の遠音ききつつ切柄杓 習志野市 杉本 和子
指先の乾く淋しさ冬に入る 札幌市 岡本  清
陶枕にふれて祖父の世引きよせり 瀬戸市 秋田 卯子
打ち水の柄杓の先に緋の鼻緒 中野区 宮川  夏
花柄の封書が夫へ西鶴忌 相模原市 宮崎登美子
秋風やこころもとなき土不踏 宇治市 田みゆき
にはか雨灼け狛犬の湯気立てて 横浜市 さとう亜麻衣
月光を直立させて神の滝 南国市 秋本 弘子
パムツカレ白亜の湯棚月の客 千葉市 樋渡 洋子
昏れのこる蛇瓜蛇でも瓜でもなく 世田谷区 富田 敏子

大久保白村選

(特選)

玉砕の島に眩しき水着たち 夷隅郡 越川  悟
万葉の径に節黒仙翁花 国分寺市 大久保明子

(入選)

語り継ぐことの多々ある残暑かな 平塚市 国沢 凛風
要支援2の妻とゐる夜長かな 草加市 片岡 宏文
秋霖や歴史教えず学ばざる 夷隅郡 越川  悟
ロシア語の案内板に小鳥来る 杉並区 境  惇子
初夢は地球連邦共和国 夷隅郡 越川  悟
昭和はや歴史の彼方雪しまく 横浜市 臼杵 游児
ローマへと続く街道秋高し 東久留米市 井坂  宏
牛泳ぎ庭は修羅場の秋出水 大崎市 木村螢雪子
その夜から灯のあかあかと終戦日 千代田区 吉川 梅子
ふぐ刺の花びらくづす迷ひ箸 江東区 千葉日出代

安西 篤選

(特選)

夏帽子線量高き風に飛ぶ 登米市 藤野 尚之
路地裏に空罐を蹴り巴里祭 川崎市 吉田ひろし

(入選)

冷えきった炬燵や妻の置手紙 横浜市 さとう亜麻衣
父の日の父残り歯を丸出しに 横手市 高橋  遥
秋晴の義足つけたるアジア象 横浜市 さとう亜麻衣
蟻の穴平和をみなで運びこむ 戸田市 梅本 重一
言ひにくきときは煽いで白扇 相模原市 宮崎登美子
廃線の鉄路に遠き天の川 仙台市 畑中 次郎
家郷てふ仮設の村へ帰省せり 秋田市 和田  仁
隣人は噂大好き神の留守 杉並区 和田とし子
秋団扇少し破けて尚馴染み 千葉市 田仲摩諭子
永遠の静止画となる敗戦日 札幌市 木宮 節子

永田龍太郎選

(特選)

人生の余白これより遠花火 神戸市 池田 雅一
禪寺に裏道のあり道おしえ 夷隅郡 岡西 宣江

(入選)

語り継ぐことの多々ある残暑かな 平塚市 国沢 凛風
盲ても朝顔育て生くる友 文京区 安岡 信子
少しずつ空を動かす鰯雲 目黒区 古谷あやを
今朝の秋柩に一夜付き添ひて 久留米市 田中 妙子
昭和は死なず八月のくるたびに 鎌倉市 佐々木一馬
終戦日目方で買はれ紬・紅絹 相模原市 宮崎登美子
鰯雲戦後生まれも高齢者 名古屋市 清水 京子
振り向けば月山深きの中 犬山市 長瀬きよ子
老鶯や省みること日に三度 夷隅郡 岡西 宣江
女ひとり急がぬ家路草の花 春日井市 長谷川治恵

棚山波朗選

(特選)

国境の枯野に列車引き離す 杉並区 境  惇子
衛兵の不動の肩に赤とんぼ 杉並区 境  幹生

(入選)

鳥渡る黄河の波の高き日も 豊中市 小畑 晴子
語り継ぐことの多々ある残暑かな 平塚市 国沢 凛風
指先の乾く淋しさ冬に入る 札幌市 岡本  清
少しずつ空を動かす鰯雲 目黒区 古谷あやを
鞄よりウィーンの森の栗ころげ 世田谷区 草野 准子
抗ひて尻尾残せり青蜥蜴 日進市 鈴木 敦子
出そびれし流燈に手を添へてやる 久留米市 田中 妙子
ヴイナスのあらはれさうな薔薇の門 夷隅郡 岡西 宣江
玉砕の島に眩しき水着たち 夷隅郡 越川  悟
稲雀被災の田より飛び立てり 仙台市 石川千代子

今瀬剛一選

(特選)

きつつきや森の奥なる美術館 所沢市 三好かほる
かまくらの雨の紫式部かな 杉並区 和田とし子

(入選)

胸元に貝のロザリオ風光る 秋田市 和田  仁
風車まで土手一すじや金鳳花 所沢市 三好かほる
独り居の何やら不安水を打つ 江戸川区 石綿 久子
杭のごと打たる荒行滝の中 杉並区 田中あき子
川の水たつぷり引きて夏館 豊橋市 西村 節子
甲賀より伊賀へと続く初もみぢ 可児市 早川まさ子
山麓の大きな寺や桜餅 小牧市 鈴木 滋三
森深くぞくぞく生えて毒茸 横浜市 加藤 厚子
くるぶしの見ゆる着丈や祭下駄 南国市 秋本 弘子
銀杏散るラストシーンめく並木道 世田谷区 石橋万喜子

大輪靖宏選

(特選)

指先の乾く淋しさ冬に入る 札幌市 岡本  清
天高し蝦夷の大地の放れ駒 葛飾区 白塚告天子

(入選)

ボヘミアの硝子壷寂び冬の月 加須市 福島 芳子
海風にしばしたたみし扇かな 堺市 山戸 暁子
しばらくは四方の山見る盆帰省 仙台市 畑中 次郎
太白星をとりこにしたる大夕焼 知立市 久永小千世
夕富士のけふよく見ゆる桜桃忌 杉並区 境  幹生
地球にも心音のあり滴れる 横浜市 佐藤 一星
鮭上る潮の香りの風つれて 杉並区 境  幹生
粗食こそ贅といふ世や目刺食む 杉並区 和場ゆすら
まあまあの夫婦でしたね木の実降る 御宿町 小野 玲子
稲の香の風芳しき田中道 高槻市 竹谷 清香

加藤耕子選

(特選)

捕虜なりし父の余生や露涼し 名古屋市 清水 京子
石佛や朽ちて熱砂の一粒に 鎌倉市 川口 弘人

(入選)

改札は女駅長風鈴列車 弘前市 岩田 秀夫
万歳の崖も摩文仁も青嵐 登米市 藤野 尚之
反り返るたびに霊峰田草取 豊田市 城山 憲三
聖杯に溢るるばかり寒月光 秋田市 和田  仁
語り継ぐことの多々ある残暑かな 平塚市 国沢 凛風
杭のごと打たる荒行滝の中 杉並区 田中あき子
いくたびも戦火見つむや今日の月 彦根市 喜龍 けん
昭和は死なず八月のくるたびに 鎌倉市 佐々木一馬
青すぎる空や八月十五日 世田谷区 草野 准子
尾張野や朝日に零る稲の花 犬山市 青山 常子

大高霧海選

(特選)

大雁塔霞万里の海に浮く 世田谷区 松浦 靖子
一滴が一水となり一瀑に 川崎市 吉田ひろし

(入選)

万歳の崖も摩文仁も青嵐 登米市 藤野 尚之
薄紙を重ねし白さ寒牡丹 名古屋市 山川 和代
荒鷹となる長城を越ゆる時 豊中市 小畑 晴子
耳ふたぐムンクの叫び原爆忌 名古屋市 兼松  悟
杭のごと打たる荒行滝の中 杉並区 田中あき子
叫びあふ鯵大漁の地引網 横浜市 さとう亜麻衣
吾亦紅夕日楕円に落ちにけり 横浜市 佐藤 一星
秋茄子や夫婦のたどる老いの道 渋谷区 玉山 和夫
蝗とはまこと馬づら峡の村 富士宮市 北川かをり
石橋も水の一景花菖蒲 江東区 千葉日出代

柏原眠雨選

(特選)

夏帽子線量高き風に飛ぶ 登米市 藤野 尚之
フレスコ画の大壁の宿つばくらめ 柏市 中川 素子

(入選)

雪の果アウシュビッツに入る線路 三田市 村 玲子
大阿蘇をゆつたり流れ天の川 登米市 藤野 尚之
噴煙を上げつつ山の粧へる 茅ヶ崎市 塚本 治彦
津波来し浜に色なき風の渦 仙台市 畑中 次郎
曲り屋の屋根草刈られ盆仕度 北区 小竿 和子
国境の枯野に列車引き離す 杉並区 境  惇子
泣いてゐる天使の像や鳥雲に 柏市 中川 素子
聖廃墟出て初蝶に出会ひけり 杉並区 境  惇子
稲雀被災の田より飛び立てり 仙台市 石川千代子
風の盆雨の小止みを踊り出づ 大阪市 西上 禎子

ハイク部門

選者

木内 徹・木村 聡雄

特選 (Prize Winners)  木内 徹 選 (和訳共)

black swan
water drops
jewel the neck
Owen Bullock(Australia)


黒い白鳥
水滴が
首飾りに
オウエン・ビュロック(オーストラリア)

dying oak
by the curator's home
limbs akimbo
Ernest j berry(New Zealand)


枯れゆく樫の木が
図書館長の家の横で
両枝を腰に当てた恰好に
アーネスト・j・ベリー(ニュージーランド)

入選 (Honorable Mentions)  木内 徹 選 (和訳共)

Botanical garden
the cafe's empty chairs
sparrow perches
Valeria Barouch(Switzerland)


植物園
そこのカフェに誰も座らない椅子
雀がとまっている
ヴァレリア・バルーシュ(スイス)

long rains. . .
the night guard's faint whistle
floats by
Kanchan Chatterjee(India)


長雨――
夜警のかすかな笛の音が
漂い聞こえる
カンチャン・チャタジー(インド)

a committee
gathers in celebration
dying buffalo
Nshai Waluzimba(Zambia)


会合が
祝福のために招集される――
水牛が息絶える
ンシャイ・ワルジンバ(ザンビア)

back to my village . . .
more furrows twisted around
the chestnut's bark
Sasa Vazic(Serbia)


村に戻る――
また畝が荒らされている
栗の木の皮が落ちている
ササ・ヴァジッチ(セルビア)

特選 (Prize Winners)  木村 聡雄 選 (和訳共)

cherry blossom rain
just a few heartbeats
from the ground
Rafał Zabratyński(Poland)


花の雨
鼓動いくつか
地面より
ラファウ・ザブラティンスキ(ポーランド)

old clock
run by finger
stopped time
Adam Augustin(Poland)


古時計
指で回して
時を止める
アダム・アウギュスティン(ポーランド)

入選 (Honorable Mentions)  木村 聡雄 選 (和訳共)

a handful
would suffice
mountain stars
Steven Clarkson(New Zealand)


ひとにぎり
ただそれだけで
山の星
スティーヴン・クラークソン(ニュージーランド)

express train
3 seconds
of sunflowers
Roberta BEARY(U.S.A.)


急行列車
三秒間の
ひまわりを
ロバータ・ビアリー(アメリカ)

Riverbank
only clover leaves
without luck
Valeria Barouch(Switzerland)


川の土手
クローバーばかり
つきも無し
ヴァレリア・バルーフ(スイス)

power restored
yet I don't rush
to blow out the candle
Alexey Andreev(Russia)


停電復旧
すぐには蝋燭
吹き消さず
アレクシー・アンドレーヴ(ロシア)